通信ネットワーク


電気通信事業者

1985年4月の電気通信制度の改革に伴って、旧電電公社と国際電電が独占していた通信事業に新規参入の途が開かれ、競争が始まりました.電気通信事業者は「キャリア(carrier)」と呼ばれ、1985年4月以降に参入した事業者は「新規参入事業者」または「NCC(New Common Carrier)」と呼ばれます.
第一種電気通信事業者 自ら電気通信設備を設置して、電気通信サービスを提供する. 総務省の許可が必要 NTT東西、NTT Com、NTT DoCoMo、KDDI、日本テレコム、TTNet
第二種電気通信事業者 他の電気通信事業者の回線設備を借りるなどしてネットワークを構築し、電気通信サービスを提供する. 登録または届出でよい. NTTデータ、IIJ

アクセス回線

広域通信ネットワークは、ユーザ宅の端末からネットワークのノード(電話局やインターネットサービスプロバイダのアクセスポイントなど)までを結ぶアクセス回線(足廻り回線)と、ネットワークのノード間を相互に結ぶバックボーン回線とで構成されています.
アクセス回線にはいろいろあるが、代表的なものは電話加入者線です.電話用メタリック加入者線は、明治時代から長い年月をかけて敷設してきたものをNTTが引き継いで独占的に使用しています.そのためNCC(新規参入事業者)が新たに加入者ケーブルを敷設するのは非常に困難であり事業者間の競争ができにくいところです.
しかし最近は、高速インターネット接続やマルチメディア通信を対象に新しい方式が登場しています.既存のCATV回線の利用、無線回線、衛星回線、光ファイバなどです.将来的には光ファイバが本命であらゆる情報信号を送受信できるようになります.

事業者間接続料金(アクセスチャージ)

長距離通信事業者は一般加入者への市内回線を所有していないので、NTT地域会社の市内回線と接続して利用できるようにしなければなりません.ところが、市外電話料金は長距離通信事業者が徴収するので、その中から市内回線に相当する料金をNTT地域会社に支払う必要があります.これが接続料金でアクセスチャージと呼ばれます.

POI(Point Of Interface)

第一種電気通信事業者間の相互接続点のことで、POI(Point Of Interface)と呼ばれます.これを境に業務区域が分かれお互いの責任分解点になります.KDDIや日本テレコムなど長距離系NCCは市内回線を持っていないので、NTTの市内回線とPOIを介して相互接続することになります.

各種情報のビットレート(通信速度)

現在のマルチメディア時代のネットワークでは、電話、データ、ファクシミリ、静止画、動画など多彩な情報が伝送されます.各種情報信号のビットレートを図に示します.同じ情報でも符号化の方法によって違う値をとるので、目的・用途に従ってどのビットレートの回線を使うかを決める必要があります.

パケット通信

パケット通信では、送信データを適当な長さに分割し、各々に宛先などの制御情報を付加します.これをパケット(Packet=小包の意味)と呼び、このパケットを単位として一つずつ宛先に従って相手まで転送します.パケット通信の利点としては以下のような点が挙げられます.
  1. 1つの回線を複数のパケットで共用でき、回線の使用効率が高い.
  2. パケット単位での誤り・再送制御をしたり伝送経路を適切に選ぶことにより、高品質伝送、高信頼度伝送が可能になる.
  3. データ信号を一度メモリに蓄積してから伝送するため、速度変換、符号変換、同報通信ができる.

コネクション型とコネクションレス型

通信ネットワークを使って相手に情報を伝えるための方法として、コネクション型とコネクションレス型の二種類があります.コネクション型通信は、情報の送信に先立ってあらかじめ情報を転送するための通信路(コネクション)を設定してから、その通信路で情報を送受する形態で、電話がその代表例です.1つの決まった通信路を通して情報が送られるので、確実に情報が相手に届き、データ伝送ではデータの到着順序は常に保証されます.
一方、コネクションレス型通信は、いきなり情報に相手のアドレスを付けて送る方法です.送りたいデータができた時点で直ちに相手に送信できるので、情報が単発的でいろいろな相手と通信するようなデータ通信に向いています.しかし相手との間に通信路が確立されていないので、送ったデータが確実に届く保証がなく、いろいろなルートを通るのでデータの到着順序が入れ替わってしまうことも起こります.インターネットやLANが代表例です.

ファクシミリ通信網(Fネット)

ファクシミリは一般には電話網にモデムを通してファクシミリを接続する方法(モデムは通常ファクシミリ装置に内臓されている)がよく使われています.ところが企業などでは、多数の宛先に短時間でFAXを届ける「一斉同報」や第三者に中身を見られないようにする「進展通信」などの要望があります.
ファクシミリ通信網(Fネット)はこのような要望に対応できるように作られたネットワークで、加入者系や交換機の一部は電話網を利用し、統合通信処理装置(MICS)とファクシミリ変換処理装置(STOC)を置いて高度なファクシミリ通信機能を提供するものです.FAX-FAX間通信に加えて、センター(コンピュータ)-FAX間通信機能も持っています.
MICSは電話網でいう交換機に相当し、ファクシミリ信号を蓄積する以外に、他のMICSやSTOCとの間で信号を送受信したり、紙面サイズや解像度変換、G3/G4ファクシミリ変換などの機能を持っています.
STOCはファクシミリ信号とコンピュータデータ信号との変換(メディア変換)機能と、コンピュータとのインターフェース機能を持っています.情報提供を行うコンピュータセンターには専用線またはパケット網を介して直接STOCに接続されています.ファクシミリ通信網の構成図を以下に示します.

デジタルデータ交換網(DDX網)

データ通信専用に端末から端末まで全てデジタルで構成したネットワークをデジタルデータ交換網(DDX:Digital Data Exchange)と呼ばれ、回線交換網(DDX-CS)とパケット交換網(DDX-PS)の二種類があります.データ伝送速度は200bps〜48000bpsまで7種類あります.
回線交換は、比較的通信時間が長く通信密度が高いデータ通信やファクシミリ通信に向いています.これに対してパケット通信は、比較的短い時間で通信密度が低い用途に適し、利用料金の遠近格差が小さい(近距離と遠距離で最大1.5倍)ので特に長距離通信に適しています.
回線交換、パケット交換ともデータ通信を対象としているが、パソコン通信やコンピュータ間のデータ通信などはパケット交換に適しているものが多いので、加入者は圧倒的にDDX-PSの方が多く、DDX-CSは同じデジタル回線交換網であるISDNに吸収されることになります.
DDXは当初は電話網とは独立のネットワークとして作られたが、もっと利用しやすくするためにその後、網間接続によって電話網に加入しているデータ端末からもパケット交換網にアクセスできる第二種パケット交換サービス(DDX-TP:9600bps以下)が始まり加入者が増えました.その後、ISDNからもアクセスできるようになり(INS-P)、伝送速度も高速化(64kbps)されました.